「走れメロス・富嶽百景ほか」感想
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- 作者: 太宰治
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2017/04/06
- メディア: 文庫
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Eテレ「100分de名著 for ティーンズ」(2018年8月)で『走れメロス』が紹介。細かい内容は忘れていたけど、改めて読むとメロスは結構ひどいな(笑)。
本書は高校教科書に掲載実績のある短編を収録。注も教科書に準じています。『女生徒』は、14歳女子の一人称視点。こんな作品もあるんですね。いわゆる「意識の流れ」でしたっけ。読んでいてちょっと恥ずかしくなるような自意識の描写が楽しい。
『富嶽百景』『トカトントン』など、どの短編も面白く読めました。国語嫌いで文豪の作品をほとんど読んできませんでしたが、こうやって読むと楽しいものですね。
「冷たい密室と博士たち」感想
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- 作者: 森博嗣
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1999/03/12
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1996年作。シリーズ第2作。第1作『すべてがFになる』を読んだ時と同様に、ミステリの骨格としては、クラシカルな(たとえばクイーンのような)印象を受けました。
犯人や犯行方法という解を導き出して、そこから動機を推測していくあたりは、いかにも理系らしさがあってゾクゾクとします。
犀川にも萌絵にも全面的な感情移入はできないのだけれど、個性的なキャラクター描写はむしろ好きなので、面白く読めました(このような読み方はラノベで身に付けた)。
コンピュータ回りの描写は懐かしさもあって、そこも楽しいところです。
「カラー版 ナルニア国物語 7 さいごの戦い」感想
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- 作者: C.S.ルイス,ポーリン・ベインズ,C.S. Lewis,瀬田貞次
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2005/11/11
- メディア: 単行本
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シリーズ最終巻だけあって、異教徒との戦いを描いた宗教色濃厚の一作。白いナルニア人(訳文ママ)に対して、異教徒は褐色で三日月刀を持つという分かりやすい構図。そして、どちらの神も信仰しない小人たち。厩(うまや)がポイントになるなど、他の巻よりキリスト教がさらに強く描かれています。
信仰を持たない自分が現代の価値観で読むと、違和感があるのは確か。ただ、幻想小説(ファンタジー)としてとらえれば、面白い話であったと思います。なかなか微妙な読後感でした。
「トムは真夜中の庭で」感想
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- 作者: フィリパ・ピアス,スーザン・アインツィヒ,Philippa Pearce,高杉一郎
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2000/06/16
- メディア: 単行本
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原著1958年作、カーネギー賞。
子供の時に読んでいて、大時計が真夜中に13時を打つとき庭から過去へとタイムスリップする――この設定だけは覚えていました。
定番のボーイミーツガール。少年は毎晩のように過去に行きながら、少年と少女で時の流れが違うのが工夫で、終盤に向けて物語が盛り上がっていきます。ラストは感動的。
荒俣宏さん曰く「「閉ざされた庭」の最も描きこまれた小説のひとつ」(『別世界通信』)。丁寧な描写を味わいながら読みたい一冊、そして、傑作。本書(手にしたのは2000年新版)では「作者のことば」が付されていて、自作解説のようになっています。
「獄門島」感想
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- 作者: 横溝正史
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 1971/03/30
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初出1947-48年。言わずと知れた名作。初読なのに、ところどころ既視感があるのは、各種媒体でオマージュされていたりして目に触れているからなのでしょう。
クローズド、闖入者、連続殺人、猟奇、見立て、血縁――などなど、あらゆる原点の要素がてんこ盛り。ドロドロの展開ながら、過度に重苦しくもなく、さらさらと読み進めることができる軽妙さもあります。でも、映像では怖そう(映画等は未見)。
最後に分かるプロローグの妙もあって、現代本格ミステリへとつながる基本書のような名作でした。
【有栖が語るミステリ100】読了29作目
【新版 東西ミステリーベスト100 国内編】読了24作目 1位
【旧版 東西ミステリーベスト100 国内編】読了8作目 1位
「ソロモンの指環」感想
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- 作者: コンラートローレンツ,Konrad Zacharias Lorenz,日高敏隆
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2006/06/01
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原著1949年刊。Eテレ「100分de名著 for ティーンズ」(2018年8月)で、瀬名秀明さんが紹介している本。以前、著書『科学の栞』でも紹介されていました。
動物行動学入門との副題がありますが、動物の観察日誌(エッセイ)のような感じで、楽しく読むことができます。「刷り込み」理論を提唱した著者だけあって、刷り込みに絡んだ鳥(カラスやカモ)の話が面白い。実際に飼育しての観察なので、たくさんのエピソードが盛り込まれています。最終章の「武器とモラル」は、人間にまで考察が及び、考えさせられます。
なお、本書は文庫版からの新装版。文庫版訳者あとがき等も再録されています。
【瀬名秀明 科学の栞 世界とつながる本棚】読了3作目
「二年間の休暇」感想
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- 作者: ジュール・ヴェルヌ,私市保彦
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2012/02/17
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- 作者: ジュール・ヴェルヌ,私市保彦
- 出版社/メーカー: 岩波書店
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原著1888年作。ヴェルヌを初読み。
『十五少年漂流記』の邦題で知られていますが、こちらは原題に即したタイトルでの完訳版。上下巻合わせて約700ページ(42字×16行・全30章)なので、かなりの長編です。
よく読まれている新潮文庫版『十五少年漂流記』は285ページのようで、ダイジェスト版の訳なのでしょう。本書は挿絵もすべて掲載されているとのことで、こちらを選択しました。
子供たちにとっての大人は希望であり、絶望でもあり――その両面が描かれているのが素晴らしい。
フランスの子とイギリスの子の対立もあり、アメリカの子がバランスを取っていく様も面白いです(著者はフランス人)。
さすがに今となっては時代遅れの価値観などが多少あれど、エンターテインメント性に富んでぐいぐいと読ませながら、人間関係や心理を考えさせられる傑作でした。
【光村図書 小学校教科書 国語 6年 紹介図書 平成27年度】