「園芸少年」感想

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園芸少年

園芸少年

2009年刊。

面白かったー。ひょんなことから園芸部として活動する男子高校生らの物語。登場人物も少なく150頁ほどなので、すぐに読み終えてしまうのがもったいないぐらいでした。

特に「BB」という名で呼ばれる不登校生徒の描かれ方が素晴らしい。彼を弱者として扱っていないし、意志を持った一人の強い人間として書かれています。

誰かが誰かを救う物語ではなく、交流しながら、それぞれが個々として成長していく。王道・正統な青春・成長物語であり、かつ、時代にも即している良作だと思います。


【光村図書 中学校教科書 国語 1年 紹介図書 平成28年度】

「モグラ博士のモグラの話」感想

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モグラ博士のモグラの話 (岩波ジュニア新書)

モグラ博士のモグラの話 (岩波ジュニア新書)

2009年刊。

キャラクターとして絵に描かれることは多く誰もがイメージできるのに、生きている姿を目にする機会はめったにないというモグラ

覚えのある著者近影だなと思ったら、前にテレビ(飛び出せ!科学くん)で見た、国立科学博物館で動物の標本を作ってる人でした。モグラが専門だったんですね。テレビでの語り口同様に面白くて、一気に読めました。

モグラの生態については分かっていないことも多く、人工繁殖すら成功していないらしい(刊行時点)。著者が研究者になるまでの経緯も書かれていて、ジュニア新書らしい良本。

【光村図書 中学校教科書 国語 1年 紹介図書 平成28年度】

「抱擁」感想

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抱擁

抱擁

2009年刊。二・二六事件の頃の東京・前田侯爵邸を舞台にしたゴシック・ホラー。

これは素晴らしい幻想奇譚でした。ですます調での独白による語り口はリーダビリティも高く、さらさらと読めてしまうところ、要所ではハッとするような表現が散りばめられていて引き締まります。

子供にしか見えない何かがある、それは――。出版社サイトによれば、某有名作のパスティシュだそうで、そちらも読んでみたいですね。

自分好みの一作でした!

金原瑞人 ふしぎ文学マスターが薦める100冊 https://goo.gl/6TMs7H 】読了51作目

「“文学少女”と恋する挿話集」感想

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“文学少女”と恋する挿話集 1 (ファミ通文庫)

“文学少女”と恋する挿話集 1 (ファミ通文庫)

2009年刊。文学少女シリーズ短編集。

『無口な王子と歩き下手の人魚』に尽きます。私は「弱者(ex.病人)である者(ex.少女)を庇護下(=支配下)に置いて承認欲求を満たしながら、最終的にその弱者に自己の存在を依存する……」という構造が嫌いなのですが、この短編における美羽は明確にその関係性を拒否していて、かつ、最後には対等の立場になり、そして芥川の側にも「痛み」を与えている(ここ大事)という構成は見事としか言いようがありません。素晴らしい。

あとは『蟹工船』モチーフの作、『はつ恋』モチーフの冒頭作も面白い。粒ぞろいの良作。

「りんごかもしれない」感想

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りんごかもしれない

りんごかもしれない

2013年刊。いまさらながらヨシタケシンスケを初読。

いやあ、これはスゴイ。この1冊の中に、ショートショートが何編も詰まっているかのような発想力の豊かさ。ユーモアがあり、ホラーやSFに通ずるようなものもあり、ほんとにバラエティに富んでいます。その発想力は、表紙・裏表紙・見返しの絵にまであふれ出る。

自分でこれだけ発想できるかと言われれば、絶対にムリですね。傑作!

【光村図書 小学校教科書 国語 2年 紹介図書 令和2年度】

「対訳 ディキンソン詩集」感想

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対訳 ディキンソン詩集―アメリカ詩人選〈3〉 (岩波文庫)

対訳 ディキンソン詩集―アメリカ詩人選〈3〉 (岩波文庫)

エミリー・ディキンソン(1830-1886)による詩50編(対訳)を収録。左頁に英文・右頁に和訳・頁下に訳注という形式が読みやすい。前書きでは、ディキンソンの生い立ちや詩集の文学的意義も紹介されていて、理解の助けになります。

そして、これは素晴らしい詩集でした。解釈は難しいようですし理解できないとしても、理屈抜きで伝わってきます。地域や家族の伝統・慣習、信仰心の問題を抱え、内省的ながらも時には瑞々しい快活な表現もあり、「米澤穂信古典部千反田えるの本棚」にセレクトされているのも納得の一冊でした。

米澤穂信古典部 千反田えるの本棚30冊】読了16作目

「柿の種」感想

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柿の種 (岩波文庫)

柿の種 (岩波文庫)

親本1933年刊。物理学者・寺田寅彦(1878-1935)による大正から昭和初期にかけての随筆集。

変に偉ぶったり、他人を見下したりということがあまりないので、非常に読みやすい。

文中、関東大震災(1923)の記述があり、本文庫(1996刊)解説で池内了氏が阪神淡路大震災(1995)に触れ、東日本大震災を経た今に読むと、考えさせられるものもあります。

「日本人の出した独創的な破天荒なイデーは国内では爆発物以上に危険視される」(昭和十年七月十三日)――この風潮はこの時代からあったんですね、根深いなあ。

米澤穂信古典部 千反田えるの本棚30冊】読了15作目