「容疑者Xの献身」感想

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容疑者Xの献身 (文春文庫)

容疑者Xの献身 (文春文庫)

物語の冒頭に犯行が描かれる倒叙物の様相を呈しつつ、最後に明かされる真相にも驚ける良作。

一目複雑に見えるトリックも、実はシンプルで古典的とも言えます。そのシンプルさが、ミステリーとしてのエレガントさに(作中で言及される数学の四色問題の証明とも対照されて)つながっているのでしょう。

作中、湯川が「ありえない」と呟くシーンがあります。その、あり得ないことがあり得てしまう――そこを描ききった筆力に感服です。

【本格ミステリ・ディケイド 300】読了10作目 2005年作