「時計館の殺人(上・下)<新装改訂版>」感想
- 作者: 綾辻行人
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2012/06/15
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いやあ、素晴らしいですね。犯人もトリックも覚えていましたが(このトリックはさすがに忘れない!)、それでも面白い。
解説の米澤穂信さんも書かれていたとおり、伏線の張り方が大胆ですよね。「えー、こんな最初にトリックのヒントを読者に与えてるよー」って思いながら読んでいました。他の綾辻作品にも言えることですけど。
「時計館の殺人」と言えば、谷山浩子さんのアルバム「歪んだ王国」に収録されている楽曲「時計館の殺人」も名曲です。作詞は綾辻行人本人です! 同アルバムに収録されている「気づかれてはいけない」の作詞も手がけ、冒頭曲の「王国」ではサイドボーカルとして参加しています。
ちなみに、「時計館の殺人」でギター(AG)を弾いているのは岡崎倫典(りんてん)さん。そう、本書の「時計館」先代当主「古峨倫典(こが・みちのり)」の名前は岡崎倫典さんから取られているのですね(「本格ミステリー館」角川文庫 134p.参照)。
そして、アルバム最後に収録されている「HATO TO MAGI」は時計がモチーフとなっていて、歌詞カードには「設計 古峨精計社」とあります。これは、本書の「古峨倫典」が経営していた会社の名前。
ここまでは、谷山浩子ファンでもある私が20年前にも知っていたこと……
これは今、歌詞カードを見直して初めて気づいたことですが、末尾の「Thanks to」の中で「ULYX」という記述がありました。
「ULYX」――つい最近、どこかで目にしたような名前で、必死に思い出した結果……
これ、この間読み返したばかりの「殺人方程式」に出てくる明日香井響(探偵役・明日香井兄弟の兄)がやっているバンド名じゃないですか!(講談社文庫 171p.参照)
そのバンド名については、初出のカッパ・ノベルス版あとがきで「ちなみに、ヒビク君がやっているヘヴィー・メタル・バンドは、僕がこのあいだまでやっていたバンド(ヘヴィメタではないけど)と名前がおんなじだったりします」(1989年刊 261p)と述べられています。
さらに、雑文集「アヤツジ・ユキト 1987-1995」(講談社文庫 89p)の注釈に「『ULYX』という名前のバンド。1987年秋に友人たちとともに結成し、以後、幾度かメンバーを入れ替えながら一九九二年春まで細々と活動を続けていた。綾辻の担当はヴォーカルであった」とあって、レコーディングは1992年2月頃だったそうですから(前掲・本格ミステリー館 246p.参照)、時期的にも一致しますね。
この「歪んだ王国」は全体的にゴシック風味で装飾されていて、まさに本書のイメージアルバムと言ってもいいような仕上がりになっています。本書を気に入った方には、ぜひともオススメしたい一作です!
それから、本書「時計館の殺人」(1991年9月刊)と同時期に出版されている谷山浩子の小説「悲しみの時計少女」(1991年11月刊)では、綾辻行人が帯に「この作品はまぎれもなく第一級のミステリー(推理小説)でもある」との言葉を寄せています(カバー袖に推薦文あり)。
この「悲しみの時計少女」の舞台は「時計館―」と同じく鎌倉であり、あとがきには講談社の宇山日出臣夫妻、皆川博子、竹本健治……といった綾辻ファンにはお馴染みの面々への謝辞が語られています。ぜひ、こちらも読んで欲しい!
なんだか、本書の感想の記事になってないですね(笑)。
「歪んだ王国」と「悲しみの時計少女」――この2作は私にとって思い出深い作品なので、つい熱くなってしまいました。
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- 作者: 谷山浩子
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