「奇面館の殺人(上・下)」感想

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奇面館の殺人(上) (講談社文庫)

奇面館の殺人(上) (講談社文庫)

奇面館の殺人(下) (講談社文庫)

奇面館の殺人(下) (講談社文庫)

上巻読了時:
登場人物一覧がない! うーむ、なにかありそう。

館シリーズで一覧がないのは「十角館」以来です。以前に著者はこんな話を……

『十角館の殺人でデビューしたとき、テレビの二時間ドラマ化の話が(略)いったいどうやってドラマにするつもりなんだろうと、作者としては不思議に思っていたんです。登場人物みんなにバケツをかぶせるんじゃないかとか(略)、案の定シナリオ化の段階で「やっぱりこれはドラマにはできません」(笑)と』(本格ミステリー館・角川文庫183p・親本1992年刊)。

そうしたら、本書で登場人物がみんな仮面をかぶっちゃった(笑)

下巻読了時:
まさか初期のような作品がここで来るとは!

綾辻さんがデビュー当時からよく言っている言葉に「無邪気・稚気」があります。

本書の大仕掛けに、わざわざ難度の高い「名前」を使ったあたり。読者からのツッコミは分かったうえで、このような「名前」を選ぶという。

暗黒館が作者の原点なら、奇面館は館の原点なのでしょう。こんなにも技巧を凝らしているのに、その一点で評価を落としかねない。でも「あえて」突っ切る。

エピローグは無邪気でありたいという作者の想い。あとがきは読者への無邪気になろうよというメッセージでしょうか。

【きっかけ:綾辻行人作品を刊行順に読破中】次は「綾辻行人と有栖川有栖のミステリ・ジョッキー 3」を読みます。