「鏡花幻想譚 5 天守物語の巻」感想

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鏡花幻想譚〈5〉天守物語の巻

鏡花幻想譚〈5〉天守物語の巻

読む前に読む。ライトノベル文学少女」シリーズ第6巻のモチーフ『夜叉ヶ池』ほか、戯曲4編が収録。

装飾の多い擬古文で読むのが難儀な泉鏡花。でも、その世界観は好みで、どうにか読みたい。本書には、あらすじ・登場人物紹介・作品の解釈を含めた注記があり、本文は総ルビ。戯曲ということもあり、筋を追えなくなることはなくすんなりと読めました。

『夜叉ヶ池』は、凄みのある傑作。村社会や伝説、異界、妖怪が描かれ、翻弄される男女の恋の結末は。物語自体はけっして難解ではなく、ユーモアもありつつ、その展開はまさに劇的、ドラマチック。

同収録の『天守物語』も『夜叉ヶ池』に劣らず、現実と異界が入り混じる中でのロマンあふれる幻想物語。

両作ともに、今の時代から読めば、男性的な原理の社会を批判していると捉えることもできましょう。

解説や注釈が充実している本を探し出す手間はあるけれど、色々と読みたい泉鏡花作品です。ああ、ほんと素晴らしい。

【『“文学少女”と月花を孕く水妖』モチーフ】『夜叉ヶ池』