「ムーミン谷の冬(ムーミン童話全集 5)」感想
- 作者: トーベ・ヤンソン,Tove Jansson,山室静
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1990/10/22
- メディア: 単行本
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金原瑞人さんが「ふしぎ文学マスターが薦める100冊」で挙げていた本。
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どうせならと、ムーミン童話全集第1巻から順に読み進めてきましたが、確かにこの巻は傑作!
ムーミンが大人たちにも広く愛されている理由を実感できました。
今まで冬眠していて冬を知らなかったムーミンが、冬眠から目覚めて初めて冬を知る物語です。
日本に住んでいても冬の暗さ・昼の短さには不安になるというのに、フィンランドの白夜はちょっと想像ができません。ただ、そんな冬を知らない自分だからこそ、ムーミンの気持ちにより深く入り込めたのかもしれません。
この巻の見所は、ムーミンが色々な物事を知り成長していくということです。それは「冬」という季節だけではなく、様々な人の考えや性格に出会っていくのです。
これまで悪役?として出てきたモランでさえ、おしゃまさんによってこう語られます
「あの人は、火をけしにきたんじゃないの。かわいそうに、あたたまりにきたのよ。でも、あたたかいものは、なんでも、あの女の人がその上にすわると、きえてしまうの。いまは、またきっと、しょげかえっているわ」
それぞれの人には色んな価値観や行動論理があって、作者は決して一緒くたに否定することなく、キャラクターを豊かに描いています。
ちょっとした脇役――孤独な犬の「めそめそ」「サロメちゃん」などの話も素晴らしい!
それから、本当にイラストがいい。そのうち、ヤンソンの画集にまで手を出してしまいそう。「ヘムル形の浮き袋」がシュールで、笑ってしまいました。
「そうよ、あたいにゃ、かなしむってことはできないの。あたいは、よろこぶか、おこるだけ」
やっぱり、ミィは良いなあ。大好きです。
次巻も楽しみ!