「ムーミン谷の冬(ムーミン童話全集 5)」感想

ムーミン谷の冬 (ムーミン童話全集 5)

ムーミン谷の冬 (ムーミン童話全集 5)

金原瑞人さんが「ふしぎ文学マスターが薦める100冊」で挙げていた本。
www2.city.tahara.aichi.jp

どうせならと、ムーミン童話全集第1巻から順に読み進めてきましたが、確かにこの巻は傑作!

ムーミンが大人たちにも広く愛されている理由を実感できました。

今まで冬眠していて冬を知らなかったムーミンが、冬眠から目覚めて初めて冬を知る物語です。

日本に住んでいても冬の暗さ・昼の短さには不安になるというのに、フィンランドの白夜はちょっと想像ができません。ただ、そんな冬を知らない自分だからこそ、ムーミンの気持ちにより深く入り込めたのかもしれません。

この巻の見所は、ムーミンが色々な物事を知り成長していくということです。それは「冬」という季節だけではなく、様々な人の考えや性格に出会っていくのです。

これまで悪役?として出てきたモランでさえ、おしゃまさんによってこう語られます

「あの人は、火をけしにきたんじゃないの。かわいそうに、あたたまりにきたのよ。でも、あたたかいものは、なんでも、あの女の人がその上にすわると、きえてしまうの。いまは、またきっと、しょげかえっているわ」

それぞれの人には色んな価値観や行動論理があって、作者は決して一緒くたに否定することなく、キャラクターを豊かに描いています。

ちょっとした脇役――孤独な犬の「めそめそ」「サロメちゃん」などの話も素晴らしい!

それから、本当にイラストがいい。そのうち、ヤンソンの画集にまで手を出してしまいそう。「ヘムル形の浮き袋」がシュールで、笑ってしまいました。

「そうよ、あたいにゃ、かなしむってことはできないの。あたいは、よろこぶか、おこるだけ」

やっぱり、ミィは良いなあ。大好きです。

次巻も楽しみ!