「フリークス」感想

フリークス (角川文庫)

フリークス (角川文庫)

中編が3つ。うち「四〇九号室の患者」は独立した単行本で20年ほど前に読んでいます。他2作は初読。

収録作のどれもが、作中作(患者の手によるものとされる)の体裁を取っています。そして、その語り手の不安定さも相まって、読んでいるうちに視点が混濁してきます。ホラーとミステリーが上手く絡んでいて、3作とも好きなタイプの話ですね。

特に表題作の「フリークス」がお気に入りです。

「フリークス」は、著者にとっても何らかの想いがある作品のようでして……。

光文社文庫版(2000年)のあとがきにこんな一節があります。

 振り返ってみるにつけ、他にもむろんいろいろな要因はあったものの、この「フリークス」という中編を書いて以来、どうも僕は「本格ミステリを書く」という行為にそれまで以上の辛さを感じるようになったのではないかと思います。まことに困ったことであります。
 今世紀のうちには何とかこの、自家中毒のようなぬかるみから脱出したいものですが、はてさて、仮にそれが叶ったとして、その先にはいったい何が待ち受けていることやら。思い悩んで行き着くところは、結局のところやはり、暗くて深いイドの底……なのかしらん。ま、いいけど。

も、もしかして行き着いたのは暗黒館? ちょうど「暗黒館の殺人」の連載が始まった時期に書かれたあとがきですね。

「暗黒館」はこれから読むのですが、文庫版四分冊(しかも分厚い)が「でん」と待ち構えており、ネタバレに触れないように気をつけてネットを見たりしているものの、漏れ伝わってくるその「異形さ」に、今からワクワクしています。

綾辻作品を刊行順に読んでいるので、実際に読み始めるのは少し先になりますが……。

次は「アヤツジ・ユキト 1987-1995」(雑文集)を読みます。