「あこがれくじら おーなり由子作品集 1」感想

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おーなり由子作品集 (1) (集英社文庫―コミック版)

おーなり由子作品集 (1) (集英社文庫―コミック版)

再読。北村薫さんが解説を書いているなら読んでみようと思って手にした漫画。

久しぶりに読んだけど、やっぱり涙が……。自分の心の琴線に見事に触れるんです。理屈じゃない。

「六月歯医者」の奇妙でユーモラスな発想、「はくしょんの時計屋」での少女と老人のちょっと切ないファンタジー。

兄妹を描いた「春のいちれつ」の見事なラスト。「おてんきチップス」は、今度アニメ映画化される「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」を思い浮かべたり(ドラマを見たのは昔なので記憶に自信ないけど)。

ピアノ弾きを描いた「てのひらの夜」は、谷山浩子の楽曲「ひとりでお帰り」を連想させました。自分の淋しさが、誰か見知らぬ人の淋しさを励ます――この感性が本当に素晴らしいです(月が出てくるところとか、谷山さんは本書から着想を得たのかと思うくらい)。

叙情とファンタジーにあふれた、まさに珠玉の傑作短編集です。

絵本作家として有名ですが、初期のコミックスが埋もれてしまっているのは勿体ないですね。復刊して欲しいなあ。

おーなり由子さんのコミックは、初期の「りぼんコミックス」4作しか無いんですよね。そこから抜粋して文庫版作品集が2冊。りぼんコミックス収集するかなあ。気長に。