「野ばら」感想
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- 作者: 長野まゆみ
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 1992/10
- メディア: 文庫
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もう10回は読んでいるのだろうけど、その度に内容を忘れてしまう。でも、愛すべき物語だと断言できる。
島田雅彦による「夜行性動物の夢」と題した解説が素晴らしい。氏は本書を「夢の言語」で書かれていると云う。
だから、まるで夢を見たかのように内容を思い出せないのだろう。私には本書の感想を書けない。ただただ、読後に白い野ばらのイメージだけが漂うのみなのだ。それだけで心地よい読書の快感を得られてしまう。もう何かの麻薬みたいな書物なんである。
そしてまた私は数年後に読み直し、きっとまた同じ感慨にふけるのだ。長野まゆみの紡ぎ出す夢に閉じ込められた私は、本書の登場人物のように、もう「出られない」。
初めて長野まゆみを読んだのは20年以上前のことだろうか。間もないうちに、宮沢賢治「銀河鉄道の夜」・稲垣足穂「一千一秒物語」と出会って、夜の世界へと引きずり込まれていったのであった。
そう言えば、ファンクラブ「三月うさぎのお茶会」にも入っていたっけ。長野さんの手書きエッセイを楽しみに読んでいた気がする。いま確かめたら1995~2002年の会報が手許に残っていた。