「ビロードのうさぎ」感想

ビロードのうさぎ

ビロードのうさぎ

雑誌「MOE 2015年1月号」で、羽海野チカさんが紹介していた絵本。

羽海野さんは、そのロングインタビューの中でこう語っていました。

誰かに置き去りにされた経験のある人には、とても刺さると思います。本って、同じ鍵穴を持った人としか分かち合えないものだから。

(※このインタビューでは、こういった突き刺さるような語りが多くでてきます)

MOE (モエ) 2015年 01月号 [雑誌]

MOE (モエ) 2015年 01月号 [雑誌]

  • 作者: 羽海野チカ,イエラ・マリ,ヒグチユウコ,桑原奈津子,石井ゆかり
  • 出版社/メーカー: 白泉社
  • 発売日: 2014/12/03
  • メディア: 雑誌
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人それぞれ、いろいろ感想・解釈が違ってくると思いますね。

私がこの絵本で感じたのは、「少年にとってのリアル」「大人にとってのリアル」「オモチャにとってのリアル」「うさぎ(生き物)としてのリアル」――それぞれのリアルが違うということです。おそらく作意とはズレた解釈でしょうが、そう自分が感じてしまったのだから仕方がない。

なお、本書は「抄訳」となっていて、原文の一部の描写は省略されています。

そして、原作のラスト1文は丸ごとカットされています。

But he never knew that it really was his own Bunny, come back to look at the child who had first helped him to be Real.

※著作権は切れているようで、原書をネットで読める。「or How Toys Become Real」という副題がある。
The Project Gutenberg eBook of The Velveteen Rabbit, by Margery Williams

この文、残すかどうか難しいですね。

「he never knew that it really was his own Bunny」は、ちょっと悲しい。読者に委ねてもいい気がします。

でも、「come back to look at the child who had first helped him to be Real」は良い文だと思います。特に「first helped him to be Real」は明示しておきたい気も。

あーでも、抄訳の文と絵でも伝わってるかなーと思ったり。

色々と思いを巡らせることのできる、素晴らしい絵本でした。