「心の宝箱にしまう15のファンタジー」感想
- 作者: ジョーンエイキン,Joan Aiken,三辺律子
- 出版社/メーカー: 竹書房
- 発売日: 2006/02
- メディア: 単行本
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なぜ子供の頃の世界名作児童文学っぽいと思ったかと言うと、ある種の「切なさ」や「哀しみ」が全体に漂っているからです。もう話の筋は覚えていませんが、「小公女」とかアニメの「世界名作劇場」とか、その類の雰囲気です。
本書は晩年の作者による15の自薦短編集ということで、どれも心に残る良作ぞろい。余韻に浸ってしまうため、一日一編のペースでゆっくりと読み進めました。
本作には不遇な少年少女が主人公のものが多くあります。どれも決してバッドエンドではありませんが、だからといって素直なハッピーエンドはほとんどありません。読み終えた後に、読者は主人公のこれからを想像し、幸せを願わずにはいられなくなります。
印象に残った作品を挙げると、「ゆり木馬」「からしつぼの中の月光」「キンバルス・グリーン」「魚の骨のハープ」「神様の手紙を盗んだ男」「真夜中のバラ」「お城の人々」……うーん、全部と言っていいかもしれません。
どれか一作だけを選べと言われれば「からしつぼの中の月光」と答えます。少女と祖母との交流、そして死。昔に読んだ(映画も見た)梨木香歩さんの「西の魔女が死んだ」を思い浮かべました。
もう一つ、「神様の手紙を盗んだ男」。孤独な郵便配達人の主人公が、その孤独さゆえに他人の手紙を盗んでしまいます。そこから急速にストーリーが展開していく、ちょっとスリリングな作です。
どの作も、登場人物のキャラクターが一癖あって、ナンセンス・ユーモアが感じられるのも素晴らしいです。ただ泣かせるための作ではありません。
そこで気になったのが、本書の帯です。
寝る前の10分をください。幸せな夢と、明日また頑張れる力を約束します。
「今日は疲れたね。」「悲しかったね。」誰が言ってくれなくても、この本はあなたの痛みをきっとわかってくれています。
また、帯の背表紙側には「一生ものの、感動。」と書かれています。
これ、自分が最も苦手とする帯や惹句のパターンなんです。本書はネットで入手したのですが、もし店頭でこの帯を見たら絶対に手を出しません。こういった語句は、かえって軽薄に感じてしまうんですよね。ただ、出版されたのは2006年ですから、「癒し本」として推すのが当たり前だったのかもしれませんし、多くの読者を獲得するには正しかったのかもしれません。私が少しひねくれているだけで。
二分冊で文庫化もされていますし、ぜひご一読をオススメします!