「中学生までに読んでおきたい日本文学 1 悪人の物語」感想
- 作者: 松田哲夫
- 出版社/メーカー: あすなろ書房
- 発売日: 2010/11/30
- メディア: 単行本
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- 「囈語」山村暮鳥
- 「昼日中/老賊譚」森銑三
- 「鼠小僧次郎吉」芥川龍之介
- 「毒もみのすきな署長さん」宮沢賢治
- 「悪人礼賛」中野好夫
- 「少女」野口冨士男
- 「善人ハム」色川武大
- 「ある抗議書」菊池寛
- 「停車場で」小泉八雲
- 「見えない橋」吉村昭
- 「山に埋もれたる人生のある事」柳田国男
これは素晴らしいアンソロジーでした。
「ある抗議書」と「見えない橋」は、対照的な作。いずれも宗教が犯罪者を救おうかという話ですが、読後感は全く異なります。いい編纂だと思います。
宮沢賢治の「毒もみのすきな署長さん」は初読。賢治は色々と読みましたが、こんな作があるとは知りませんでした。
「悪人礼賛」はエッセイで、「善意の善人ほど始末に困るものはない」という話。これは今の世の中でも当てはまる、というか、むしろ現代にこそ厄介な問題として現れているもの。極端・過度な活動を行う市民団体などが思い浮かびます。
そして、一番印象に残ったのが、野口冨士男「少女」。男が少女を誘拐し連れ回すというストーリーで、終始口数の少ない少女が最後に発する言葉に胸が痛みます。短編にするにはもったいないくらい濃密な一編。しかし、これを中学生までに読むべきかというと……
「心の闇(悪)」を描くというのは小説の大きなテーマだと思いますし、もともとミステリ好きなので、この巻はどれも面白く読めましたね。文学だからといって難しいという感じはありませんでした。