「謎々 将棋・囲碁」感想

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謎々 将棋 囲碁

謎々 将棋 囲碁

2018年刊。初出2015~17年。将棋・囲碁を題材にしたアンソロジー

葉真中顕『三角文書』が秀逸。葉真中さんは根っからの将棋好きだけあって、将棋ファンからすると細かいネタで笑えます。加藤一二三九段は、よくインタビューで棋譜を楽譜になぞらえているので、おそらくその辺りがモチーフかな。

新井素子『碁盤事件』も、新井さん独特の文体もあいまって面白かった。ほんと、クセになる読み心地。千澤のり子『黒いすずらん』は、ダークなミステリータッチの作で、なかなか。瀬名秀明『負ける』は、実際の電王戦(将棋)で起きた出来事がベースになっているので、観る将棋ファンとして考えさせられる作でした。

「インスマスの影 クトゥルー神話傑作選」感想

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インスマスの影 :クトゥルー神話傑作選 (新潮文庫)

インスマスの影 :クトゥルー神話傑作選 (新潮文庫)

1920-1936年作。2019年新訳。前々から気になっていたクトゥルフ神話。文庫で新訳が読めるのは嬉しい(創元推理文庫ラヴクラフト全集1巻は1974年初版)。

冒頭2作「異次元の色彩」「ダンウィッチの怪」が秀逸。SF風味もあって面白い。最後の表題作「インスマスの影」は、昔読んだ伊藤潤二のマンガをそれとなく思い出したり。

どの作も、心理描写や風景描写が執拗なほどにねちっこい。読むのに時間はかかるけれども、この世界にすっかりハマってしまっている自分がいます。名状しがたい!

「まっくら森」感想

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まっくら森

まっくら森

2004年作。NHKみんなのうた「まっくら森の歌」(谷山浩子作詞・作曲)からの派生絵本。

みんなのうたと同じ本橋靖昭さんによる絵なので、違和感はなし。テレビ版とは違って不気味さ
はないけど、幻想味はたっぷり。

本橋靖昭さんは谷山浩子・歌詞集「ねこの森には帰れない」(新潮文庫1984年)でも挿絵を何点か描かれていましたね。好きな絵です。

「フランケンシュタイン」感想

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フランケンシュタイン (光文社古典新訳文庫)

フランケンシュタイン (光文社古典新訳文庫)

1831年作(初版1818年)。

誰もが名前を聞いたことのあるような有名作も、フランケンシュタインと言えば『怪物くん』(藤子不二雄)、そして、怪物の名前ではなく博士の名前というトリビアぐらいしか知りませんでした。

怪物の独白パート。人間と触れあいたいという希望が絶望へと変わっていくのが、とにかく切なくて悲しい。丁寧な風景描写、淡々と積み重ねられる心理描写が、じわじわと心に染み入ってきます。

ホラー風味はあまりなく、フランケンシュタインと怪物、それぞれの感情の移ろいが読みどころ。

読んでいる途中、カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』のことを何となく思い浮かべたのですが、訳者解説で言及がありました。

米澤穂信古典部 千反田えるの本棚30冊】読了20作目
【『“文学少女”見習いの、傷心』モチーフ】

「園芸少年」感想

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園芸少年

園芸少年

2009年刊。

面白かったー。ひょんなことから園芸部として活動する男子高校生らの物語。登場人物も少なく150頁ほどなので、すぐに読み終えてしまうのがもったいないぐらいでした。

特に「BB」という名で呼ばれる不登校生徒の描かれ方が素晴らしい。彼を弱者として扱っていないし、意志を持った一人の強い人間として書かれています。

誰かが誰かを救う物語ではなく、交流しながら、それぞれが個々として成長していく。王道・正統な青春・成長物語であり、かつ、時代にも即している良作だと思います。


【光村図書 中学校教科書 国語 1年 紹介図書 平成28年度】

「モグラ博士のモグラの話」感想

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モグラ博士のモグラの話 (岩波ジュニア新書)

モグラ博士のモグラの話 (岩波ジュニア新書)

2009年刊。

キャラクターとして絵に描かれることは多く誰もがイメージできるのに、生きている姿を目にする機会はめったにないというモグラ

覚えのある著者近影だなと思ったら、前にテレビ(飛び出せ!科学くん)で見た、国立科学博物館で動物の標本を作ってる人でした。モグラが専門だったんですね。テレビでの語り口同様に面白くて、一気に読めました。

モグラの生態については分かっていないことも多く、人工繁殖すら成功していないらしい(刊行時点)。著者が研究者になるまでの経緯も書かれていて、ジュニア新書らしい良本。

【光村図書 中学校教科書 国語 1年 紹介図書 平成28年度】

「抱擁」感想

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抱擁

抱擁

2009年刊。二・二六事件の頃の東京・前田侯爵邸を舞台にしたゴシック・ホラー。

これは素晴らしい幻想奇譚でした。ですます調での独白による語り口はリーダビリティも高く、さらさらと読めてしまうところ、要所ではハッとするような表現が散りばめられていて引き締まります。

子供にしか見えない何かがある、それは――。出版社サイトによれば、某有名作のパスティシュだそうで、そちらも読んでみたいですね。

自分好みの一作でした!

金原瑞人 ふしぎ文学マスターが薦める100冊 https://goo.gl/6TMs7H 】読了51作目