「憑霊信仰論」感想

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憑霊信仰論 妖怪研究への試み (講談社学術文庫)

憑霊信仰論 妖怪研究への試み (講談社学術文庫)

京極夏彦『姑獲鳥の夏』、三津田信三『厭魅の如き憑くもの』の両書にて参考文献に挙げられている民俗学本。

陰陽師・式神・いざなぎ流・因縁調伏・犬神憑き――と、この手の小説やフィクション好きならば面白く読めるはず。京極本を読んでいれば、憑きものの論考は分かりやすいと思う。

急に経済的に豊かになった家への嫉妬心が「憑きもの筋」を生み出したという見立ては、現代にも通ずるように思えて興味深い。

五章「護法信仰論覚書」での「「憑坐」とは、したがって、病人の体内で生じていることを映し出し、観客に示すための《鏡》の役割を果たしているのである」という指摘にハッとさせられる。四章の章題に「説明体系としての「憑きもの」」とあるように、この世の不可解なことを、説明することにより解決していくわけなのである(現代では科学で説明される)。

この「説明」をミステリにおける探偵の推理と解決(→憑きもの落とし)に結びつけた京極夏彦さんの発想は、すばらしい慧眼だと思う。