「さよなら妖精」感想

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さよなら妖精 (創元推理文庫)

さよなら妖精 (創元推理文庫)

再読。初読時はライトノベル・ジュヴナイルという意識で読んだと思います。世界(ユーゴスラビア紛争)と日常の謎――大小のテーマが焦点を結ぶ良作。

作者→主人公→読者という図式を著者が意図的にズラしている感じ。主人公は作者の投影ではないし、主人公に読者が没入しきるというわけでもない。そのズレが、何とも言えない苦さを生み出しているのだと思います。

推理の結果、たとえそれが真実と一致しても世界が解決(秩序が回復)するわけでもない。ミステリーの観点からすれば、探偵の無力さを見て取れます。それは、刊行順で言えば次作にあたる「小市民シリーズ」にも当てはまるでしょうか。

【本格ミステリ・ディケイド 300】読了17作目 2004年作