「人狼城の恐怖」感想

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人狼城の恐怖〈第1部〉ドイツ編 (講談社文庫)

人狼城の恐怖〈第1部〉ドイツ編 (講談社文庫)

人狼城の恐怖〈第2部〉フランス編 (講談社文庫)

人狼城の恐怖〈第2部〉フランス編 (講談社文庫)

人狼城の恐怖〈第3部〉探偵編 (講談社文庫)

人狼城の恐怖〈第3部〉探偵編 (講談社文庫)

人狼城の恐怖〈第4部〉完結編 (講談社文庫)

人狼城の恐怖〈第4部〉完結編 (講談社文庫)


第一部)
著者作の初読み。四部作の大部で馴染めなかったらどうしようと不安だったものの、読んでみたら面白くて、これなら最後まで楽しめそうです。
舞台がドイツなためにカタカナ人名で、登場人物もそれなりに多いのですが、混乱することなく読めました。
凄惨かつ不可解な事件が相次ぎ、ラストも申し分ない「引き」で、長編を一冊読み切った満足感があります。もちろん何一つ事件は解決していないので、今後の展開に期待。

第二部)
第二部ではオカルト要素も絡んで、さらに怪奇幻想ミステリの趣向が強くなりました。
入城後は一人称(手記形式)なこともあり、不安定さや緊迫感が増して長さを感じさせない。
いったい、この先どうなるんだろうか? 現実的に解決されると一気に興ざめするということもあり得るから、ミステリって難しい。第三部も楽しみです!

第三部)
蘭子登場。シリーズ初読なので初遭遇。過去の事件の話題も出てくるので、順番に読んでいればより楽しめたかも。
事件が整理されながらの推理合戦で、記憶力が衰えている私のような読者に優しい(参照頁付)。ここまで飽きずに読めました。
いろんな推理小説からの引用もあって、もっと多くのミステリを読みたくなる。
次はいよいよ完結編!

第四部)
幻想怪奇と本格ミステリが融合した傑作。
これだけ大きく展開した事件を、本格ミステリの手法でシンプルに収束させたのがお見事。かつ、幻想怪奇の部分も事件と密接に関係し、さらにエピローグでの展開があって申し分ない。
なお、蘭子のキャラクター設定や大仰なセリフ回しについては、「本格ミステリ・ベスト10 99年版」の解説(第1位)が参考になりました(読者と一定の距離をとるためという主旨)。
これを機に、蘭子シリーズを最初から読んでみたいですね。また読みたい本が増えてしまいました!

全四部(解説を除いた小説本文最終頁の合算)で計2587頁(41字×18行)。現在の講談社文庫の字組(38字×16行)だと計3000頁ぐらいになりそうです(笑)

【本格ミステリ・クロニクル 300】読了26作目 1998年作