「十角館の殺人(新装改訂版)」感想

十角館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)

十角館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)

私が読書をするようになったきっかけは、大学生の頃に谷山浩子さん(シンガーソングライター)の音楽に触れたことからでした。谷山浩子さんは著作も多く出していて、たしか初めて手に取ったのは「猫森集会」だったと思います。

猫森集会 (新潮文庫)

猫森集会 (新潮文庫)

その解説(新潮文庫版)を書かれていたのが、綾辻行人さんでした。10ページにも及ぶ熱い語り口に魅せられ、本格推理作家という肩書きに、子どもの頃に読んでいた乱歩やホームズを思い出し、綾辻作品を読み始めるようになったのです。

最初に読んだのは「迷路館の殺人」で、次にデビュー作の本書「十角館の殺人」から発刊順に読んでいったと思います。

本作を読むのはたぶん三回目。今から30年ほど前の作品なので、さすがに時代を感じるところはあります。犯人やトリックも覚えていましたし、私の好きな「幻想的」な綾辻行人の作風を本書で味わうことはできませんが、それでも面白く読めました。

著者あとがきによれば、この改訂版にあたり、別物にならぬよう大きな改稿はしていないということなので、未読の方は本書を手に取られるとよいかと思います。旧文庫版の解説も再録されていますし、新たな解説と著者あとがきがあります。

綾辻ミステリの入門作として紹介される定番作ですが、私としてはちょっと薦めにくい気もしますね。私はやっぱり「幻想」好きなんです。「囁きシリーズ」が大好き! 「Another」が大好き!

あと、登場人物のニックネームになっている海外作家の古典作品を、ほとんど読んでいないんですよね。読んだことがあるのは、アガサクリスティの「そして誰もいなくなった」とエラリークイーンの「Xの悲劇」「Yの悲劇」ぐらいですか。古典も読んでいきたい!

それから、綾辻作品は解説やあとがきを読むのが楽しいんです。そもそも私の綾辻体験は先に書いたように「猫森集会」の解説から始まってますから。あの解説は、綾辻作品のベスト3に入れたいぐらいです。

なお、「猫森集会」の解説は↓にも収録されています。

復刻版 アヤツジ・ユキト 1987-1995

復刻版 アヤツジ・ユキト 1987-1995

最近になって読書趣味を再開し原点に戻ろうという意識もあって、また綾辻作品を順に読もうと思い立ちました。館シリーズでは「水車館」「時計館」が好きだった記憶があります。あの日の感動を再び体験できるのかと思うと楽しみです。