「盤上の夜」感想

盤上の夜 (創元SF文庫)

盤上の夜 (創元SF文庫)

このミステリーがすごい!2013年版の10位(このミスを1年ずつ遡って読んでいます)。

今はまとまった時間が取れないので視聴を自制しているのだけれども、私はニコニコ動画での将棋観戦が大好きです。最初期の頃から見ていました。

本書の作者・宮内氏は、たしか電王戦のニコファーレ会場にゲスト出演されていたような記憶がありますね。なので、このミス2013年版からの1冊はすんなり決まりました。

このミスなのでミステリーと思ったらSFなんですね。創元SF短編賞と書かれていたので初めて気づきました。それほど、私は今の出版業界に疎いのです。

いちばん好きなのは、麻雀を扱った「清められた卓」。麻雀は最低限のルールと役を知っているぐらいで得点計算もできないのですが、そんな私でも面白く読めました。実際にゲームが進行しながらのストーリーなので、緊迫感が伝わってきます。

チェッカーを扱った「人間の王」は、実在した人物の実話が元になっていて、評伝として面白い。

表題作「盤上の夜」と「原爆の局」は囲碁の話。「盤上の夜」は四肢切断された少女が、肉体的な感覚を碁盤に覚えていく。一方、「原爆の局」は実話がモチーフになっており、「盤上の夜」のその後のストーリーと絡まっていきます。

「千年の虚空」は将棋。「盤上の夜」以上にエグく感じました。

読書歴が浅くSFに疎い私にとって、このように虚実混じった連作に馴染めないところはあったのですが、非常に面白く読めた短編集でした。奇妙で独特な味わいが続くので、一気に読むのはしんどいかもしれません。

本書を読み終えたら、下記のサイトで筆者のロングインタビュー(鼎談)が掲載されていますので、参照されると良いでしょう。さらに作品を深く楽しむことができますよ!
www.webmysteries.jp