快作!「アリス殺し」感想
- 作者: 小林泰三
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2013/09/20
- メディア: 単行本
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本書の最初のページを開いたときに、これはアリスを先に知っておいたほうがいいなと思って、先日のブログに書いたように「新訳 ふしぎの国のアリス (角川つばさ文庫)」を読んだのでした。
結果、大正解。アリス世界とこちらの世界の殺人がリンクするというファンタジー(幻想)な世界観での話をスムーズに受け入れることが出来ました。
アリス世界での会話のやりとりは、事前にアリスを読んでいるとニヤニヤできます。それに、いかにアリスの原作を巧みに取り入れているかも分かって、その筆力に驚かされます。童謡や童話をモチーフとした見立て殺人ものは数多くあると思うのですが、本作は童話世界そのものが作品に組み込まれていますからね。ひとつのパスティーシュ(オマージュ)ものとしても面白く読めると思います。
ただ「鏡の国のアリス」も読んでおくべきだったかもしれません。大昔に一度は読んでいたと思うんですが、ハンプティ・ダンプティしか覚えてなかった。原典のマザー・グースを確か講談社文庫で読んだことはあるはずなので、そっちで覚えてたのかも。知らないキャラクターの情報は、Wikipediaを参照するなどして補填しながら本書を読み進めることに。
もうね、作者の描き出すファンタスティックな世界に見事にはまりました。読書の悦び。アリスの不条理世界をダークな方向で楽しめる人なら、本書も楽しめるのではないかと。
ネットでの読者レビューで多く言及されているグロさエグさは、私はあまり感じませんでした。あ、最後はちょっとエグいかな。
一つ気になったこと。それは、帯の「どれだけ注意深く読んでも、この真相は見抜けない」という惹句。この手のフレーズ、苦手なんです。余計な先入観を持ってしまうので。
近いうちに「かがみの国のアリス」も読んでおこうと思います。そう、角川つばさ文庫版で!
- 作者: ルイス・キャロル,okama,河合祥一郎
- 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2010/08/20
- メディア: ペーパーバック
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