「とくべつな いちにち」感想
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- 作者: イヴォンヌ・ヤハテンベルフ,野坂悦子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/03/24
- メディア: 単行本
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原著2001年刊。
初めての学校で、なじめない少年アルノ。狼の面を被り、赤ずきんの狼役を演じたことが、きっかけになる。まずは、ペルソナを通した自分が受け入れられる。アルノはそのまま狼を演じたがるが、仮面を脱ぐことを決意する。
狼を演じる時に「アルノが へんじを する まえに、まわりの みんなが――」、面を脱ぐ時に「でもね、みんなの こえが――」と、周囲から働きかけているところもポイント。
狼の面を取っても「いつもどおりの アルノ」、つまり、ありのままの自分。適応と受容の両面が描かれている……と、自分なりに解釈して読みました。
【光村図書 小学校教科書 国語 2年 紹介図書 令和2年度】
「読書について 他二篇」感想
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- 作者: ショウペンハウエル,Arthur Schopenhauer,斎藤忍随
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1983/07
- メディア: 文庫
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原著1851年刊。哲学には疎く、名前だけは聞いたことのあるショウペンハウエル。哲学の知識がないと読めないのかと思ったら、思いのほか明瞭明快。
多読によって自分自身で考えなくなるようになる弊害を強く語っていて、これは現代に置き換えると、読書に限らない「(ネット上を含めた)情報」一般に言えることでしょうか。ネット上に知識を外在できるので、本当は思索に専心できるはずなのだけど。
最初は天才ぶった(いや天才なのだろうけど)書きぶりに辟易したものの、余りにも辛辣に断定調でぶった斬っていくので、途中から逆に面白くなりました。
「不在の騎士」感想
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- 作者: イタロカルヴィーノ,イタロ・カルヴィーノ,脇功
- 出版社/メーカー: 松籟社
- 発売日: 1989/05
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原著1959年作。
甲冑姿で実体のない騎士・アジルルフォが主人公。簡単に言うと『鋼の錬金術師』の弟・アルフォンス。若者や盾持ち、女騎士などを配して、それぞれの存在意義を問うような物語です。
中世騎士社会を舞台にしていて、ユーモラスな場面も多く(そして、そこに寓意が仕組まれている)、冒険・ファンタジー(幻想)小説としても面白い。
作品自体にも語り手を置いて、「存在」について考えさせられるようになっています。200頁ほどと長くはないのですが、じっくりと読ませる濃厚な作でした。
「改訂完全版 異邦の騎士」感想
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- 作者: 島田荘司
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1998/03/13
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1988年作。1998年改訂完全版。
御手洗潔シリーズ長編3作目にして、御手洗最初の事件。「占星術」「斜め屋敷」とは違った趣向の大がかりな仕掛け。このトリックを物語として成立させてしまう圧倒的な筆力がすごい。物語に引き込まれて、最初から最後まで一気読みでした。
多少、古くさいところや価値観が合わないところもあれど、傑作には間違いなし。
あと、再読かと思ったら初読だった(こんな衝撃を忘れるはずがない)。それとも記憶喪失?
【本格ミステリ・クロニクル 300】読了43作目 1988年作
【新版 東西ミステリーベスト100 国内編】読了26作目 56位
【このミステリーがすごい!】1988年版 5位
「怪談 牡丹燈籠」感想
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- 作者: 三遊亭円朝
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2002/05/16
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2002年改版。最初に手にした旧版は旧字旧仮名で、自分の国語力ではとても読めないと思ったものですが、改版が出ていて助かりました。
人情、愛憎、策略、仇討ちなど、サスペンスフルな物語展開で、まるでミステリーを読んでいるかのような感覚。人相見の白翁堂勇斎と住職の良石和尚が、良い味を出していて好きですね。京極夏彦にリメイクして欲しいと思ったり。
解説にて、落語の速記本が言文一致の先駆けということも知りました。思った以上に読みやすく楽しめたので、大満足。
【金原瑞人 ふしぎ文学マスターが薦める100冊 https://goo.gl/6TMs7H 】読了50作目
「生きのびるために」感想
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- 作者: デボラエリス,Deborah Ellis,もりうちすみこ
- 出版社/メーカー: さえら書房
- 発売日: 2002/01
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原著2000年刊。原題『The Breadwinner』。
タリバン政権下のアフガニスタンで生き抜く少女を主人公とした物語。難民キャンプでの取材を元に書かれたということ。
少女の視点から、家族や友人、タリバン兵を含む大人たちが語られています。全体として抑制の利いた筆致のため、ありがちな押しつけがましさは感じられません。少女の心理描写を通じて、その悲惨さが痛烈に伝わってくる良本。
【光村図書 中学校教科書 国語 1年 紹介図書 平成28年度】
「ゆるカワ日本美術史」感想
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- 作者: 矢島新
- 出版社/メーカー: 祥伝社
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土偶や埴輪から近代まで、ゆるカワ・素朴の視点から書かれた日本美術史。専門家によって書かれた学術的な本です。
円山応挙といえば幽霊図のイメージだったので、かわいい子犬の絵は新鮮でした。「鳥獣戯画」は、小6の教科書でも、高畑勲さんによる文章でアニメと絡めて紹介されていますね。医学書「針聞書」の虫の絵は、荒俣宏さんの本でも見たことがあった気がします。
美術には疎いので、知らないことばかり。いろいろと勉強になりました。