「復活の日」感想

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復活の日 (角川文庫)

復活の日 (角川文庫)

1964年(東京五輪開催年)の作。新型ウイルスのパンデミックによる人類滅亡の危機を描いたSF長編。

現在の状況とシンクロする言動や思考が随所に見られて、なんとも言えない気持ちになってしまいました。未知のウイルスに対する決定的な対処法がないのは、当時と変わっていません。

米ソ開戦に現実味があった時代の作で、戦争とウイルスの恐怖がミックスされています。現実世界では米ソの冷戦は一応克服したけど、果たしてウイルスは克服できるのか。

作中で、ある医師は言います。「どんなことにも……終わりはあるさ……」「ただ……どんな終わり方をするかが、問題だ」

素晴らしい作品ですが、いま読むには覚悟がいりますね。

「ラノベ古事記」感想

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ラノベ古事記 日本の神様とはじまりの物語

ラノベ古事記 日本の神様とはじまりの物語

2017年刊。古事記・上巻の(おそらく)忠実なラノベ化。

その昔、橋本治の桃尻語訳で枕草子を読んだことはあったけど、それをはるかに上回る衝撃。もう、むちゃくちゃ面白い!

もともと著者のWebサイトで公開されているものなので、ラノベ耐性のある方は、ぜひ読んでみて欲しい。

アマテラスなんて最高のキャラじゃないですかw 現在、出雲大社で祀られているオオクニヌシは縁を結びすぎだしw 竜宮城や因幡の兎の話も出てくるし、ストーリーは超展開!(※原典準拠)だしで、448ページをまったく飽きることなく読み終えました。

せっかく版元が角川なんだから、本文中の挿絵もがっつり付けて、本としても完全ラノベ化(文庫本)して欲しいですね。

Twitterを拝見すると、著者は三児のママさんで、育児をしながらも中巻を執筆中とのこと。『ラノベ日本書紀』を芸術新潮で発表されているそうで、合わせて単行本化が待たれます!

いやー、楽しい読書でした!

「秋期限定栗きんとん事件」感想

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秋期限定栗きんとん事件〈上〉 (創元推理文庫)

秋期限定栗きんとん事件〈上〉 (創元推理文庫)

秋期限定栗きんとん事件 下 (創元推理文庫 M よ 1-6)

秋期限定栗きんとん事件 下 (創元推理文庫 M よ 1-6)

2009年作。約10年ぶりの再読。

事件の結末を迎えると、まるで二人のためにあったような事件ですね。探偵が介在していなければ、被害者(殺人ではないけれど)も変わっていたかもしれない。その辺も含めて、作品全体のビターな雰囲気がたまりません。

今回は甘さ控えめだったかな。いや、最後は甘い、のか?

それにしても、小山内さん、怖い、怖すぎる。ほぼホラー小説(違う)。

以前に何かのインタビュー記事で、編集者から悪女物に挑戦して欲しいと言われている――というようなことを著者が語っていたのを思い出して、すでにこの時点で書いてるじゃん!とツッコミたくなりました笑。

次作の『巴里マカロンの謎』は「冬期限定」では無いようなので、古典部シリーズと合わせて続きが期待されます。ラノベから一般へ移行してもシリーズを続けてくれているのは嬉しい。

【このミステリーがすごい!】2010年版 10位

「夏期限定トロピカルパフェ事件」感想

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夏期限定トロピカルパフェ事件 (創元推理文庫)

夏期限定トロピカルパフェ事件 (創元推理文庫)

2006年刊。再読。

本格ミステリにおける探偵の苦悩というテーマが、同時に青春物の痛みとしても描かれていて、その何とも言えない絶妙な苦さと甘さのブレンド具合が、小市民シリーズの最たる魅力。

独立した短編としても読める第一章の「シャルロットだけはぼくのもの」が、甘くて楽しい。この甘さが最後には苦さへと転化していくのだよね。

そして、終章のタイトルが「スイート・メモリー」。読者として感情移入しようとすると最後に突き放してくる小佐内さんのキャラクター造形やストーリー運び。このダークな作意が、たまらなく好きです。

本格ミステリ・ディケイド 300】読了18作目 2006年作
【このミステリーがすごい!】2007年版 10位
本格ミステリ・ベスト10】2007年版 4位

「十の物語 現代ホラー傑作選 第3集」感想

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現代ホラー傑作選 (第3集) (角川ホラー文庫)

現代ホラー傑作選 (第3集) (角川ホラー文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 1993/07
  • メディア: 文庫

1993年刊。高橋克彦編によるアンソロジー山田風太郎『人間華』、香山滋『月ぞ悪魔』、夢野久作『卵』といった幻想怪奇風味が強いものが好み。濃厚すぎて大満足。

三橋一夫『角姫』は角隠しからの発想なんだろうけど、他と作風・文体が違って、ちょっとおもしろ可笑しい。

中津文彦すてきな三にんぐみ』は、ホラー風な話がリアリティのあるミステリーサスペンスとして決着しそうなところ、意外なオチにびっくり。コントかよ!とツッコミたい(笑)

他の作品も、山村正夫岡本綺堂都筑道夫柴田錬三郎と豪華メンバーで、贅沢な一冊でした。

「怪談入門 乱歩怪異小品集」感想

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怪談入門 (平凡社ライブラリー)

怪談入門 (平凡社ライブラリー)

2016年刊。東雅夫氏による乱歩作品のアンソロジー。短編は3作(+翻訳1作)で、随筆や書評・座談会が中心です。

乱歩は小説が面白いのはもちろんのこと、エッセイも面白い。ユーモアがあるし、小説もそうだけど語り口が絶品。戦前戦後の時代に海外作品を原書で読んで紹介していたり、雑誌の編集で新人作家を世に送り出したりと、功績は偉大ですよね。

なお、本書の表題エッセイ「怪談入門」を元に『乱歩の選んだベスト・ホラー』(森英俊野村宏平編、ちくま文庫、2000年刊)というアンソロジーが編まれています。怪談入門で紹介されている作品のリストも掲載されているので、興味ある方はぜひ。

乱歩の選んだベスト・ホラー (ちくま文庫)

乱歩の選んだベスト・ホラー (ちくま文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2000/03
  • メディア: 文庫

「魔眼の匣の殺人」感想

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魔眼の匣の殺人

魔眼の匣の殺人

2019年刊。『屍人荘の殺人』に次ぐシリーズ作。

前作は特殊なクローズドサークルでしたが、今回は王道のクローズド。しかし、今作は「予言」という特殊状況があって、後々のストーリー展開に効いてくるのが読みどころです。

予言というオカルトっぽさが雰囲気的な演出ではなくて、本格ミステリのロジックにきちんと組み込まれているのが素晴らしい。複雑な状況を整理しながらシンプルに見せてくれているのも、読みやすさにつながっていますね。